...いままで始終、快活な微笑を浮かべていた暮松は、急に真顔になって、警部の半ば禿(は)げかかった広い額と、やや陰鬱な、威厳のある眼をじろじろ見入った...
妹尾韶夫 「凍るアラベスク」
...巷間に言ひ伝へられてゐるやうな陰鬱な反目など私たちにはさつぱり見受けられませんでした...
太宰治 「右大臣実朝」
...彼はときどき昌さんをつれて山へ行くが、昌さんは民さんが牛を引いてゆく後から、例のもつれるやうな足をして、陰鬱な顏をして、ふらりふらりとついて行く...
田畑修一郎 「南方」
...彼の心からこの陰鬱な物思いを払い除ける魅力を持っているのは彼の娘だけであった...
チャールズ・ディッケンズ 佐々木直次郎訳 「二都物語」
...「恐怖と屈従との陰鬱な敬意以外のどんな敬意でも浮べて私を見てくれるような顔は一つだって見当りませんよ...
チャールズ・ディッケンズ 佐々木直次郎訳 「二都物語」
...――陰鬱な待合時間だった...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...梅雨のような陰鬱な雨だった...
豊島与志雄 「反抗」
...一種の空気がずつと貫いて陰鬱な色が万遍(まんべん)なく自然(じねん)に出てゐる...
夏目漱石 「『煤煙』の序」
...ああ まつくろのながい着物をきてしぜんに感情のしづまるまであなたはおほきな黒い風琴をお彈きなさいおそろしい暗闇の壁の中であなたは熱心に身をなげかけるあなた!ああ なんといふはげしく陰鬱なる感情のけいれんよ...
萩原朔太郎 「青猫」
...僕の生涯の中での最も呪はしく陰鬱な時代であり...
萩原朔太郎 「僕の孤独癖について」
...陰鬱な生徒になってしまった...
原民喜 「背後」
...聞えて来る重病人の陰鬱な呻き声だけが...
火野葦平 「花と龍」
...白(ブランク)ならば未だしも救はれる、にも関はらず自分の胸の底には彼等のそれと反対の凡てを鬱積させてゐる――小胆の癖に大胆を装うてゐる、自信は毛程も持ち合せない、役に立たないカラ元気ばかりを煽りたてゝゐるんだ――卑しい妄想と、愚かな感傷と、安価な利己心と、陰鬱な夢と、その癖いけ図々しい愚昧な策略とを持つてゐるんだ...
牧野信一 「明るく・暗く」
...陰鬱な気持は晴れて快活となり...
三木清 「語られざる哲学」
...この陰鬱な空気が沁み込んでしまった...
水野葉舟 「帰途」
...彼女が笑いをひそめる刹那の陰鬱な表情を思いうかべると急に心が凍るように冷くなった...
横光利一 「馬車」
...高台にあるため繁みの深さに陰鬱な気がなかった...
横光利一 「旅愁」
...此(この)陰鬱な天候に加へて諒闇(りやうあん)の中に居る自分達は一層気が滅入(めい)る許(ばか)りである...
與謝野寛、與謝野晶子 「巴里より」
便利!手書き漢字入力検索
