...ツイ四五日前までは不見不知(みずしらず)の他人であつた若い美しい女と、恁(か)うして唯二人人目も無き橋の上に並んでゐると思ふと、平生(へいぜい)烈しい内心の圧迫を享け乍ら、遂(つい)今迄その感情の満足を図(はか)らなかつた男だけに、言ふ許りなき不安が、『男は死ぬまで孤独(ひとりぼつち)だ!』といふ渠(かれ)の悲哀(かなしみ)と共に、胸の中に乱れた...
石川啄木 「鳥影」
...胸の中が宛然(まるで)...
石川啄木 「漂泊」
...小さい胸の中では...
石川啄木 「二筋の血」
...いよいよ自分の胸の中にも何かがわきかえる思いがするのである...
伊藤左千夫 「隣の嫁」
...彼の胸の中で渦巻いた...
豊島与志雄 「囚われ」
...嘗て一たびも恋の囁きさへ耳にしたことのない少女の胸の中(うち)に潜んでゐたかといふことがわかる...
中沢臨川 「愛は、力は土より」
...そのしぶとさが余計胸の中に来ると...
林芙美子 「魚の序文」
...熱い塊が胸の中でごろごろ転がるが一滴の涙も枯れ果ててしまっている...
北條民雄 「いのちの初夜」
...これを見とゞけて家とはいふばかりの巣に一人いためる胸の中...
槇村浩 「鶴と鶯」
...娘御(むすめご)のお胸の中は...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...思わず胸の中を一抹の微笑が流れた...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...胸の中で凱歌(がいか)の声が起る程...
森鴎外 「かのように」
...胸の中に清浄に信義を懐いているものは幸福だ...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...ジャックの胸の中の或るものが焼けおちて...
ジャック・ロンドン Jack London 山本政喜訳 「荒野の呼び声」
...急にどきんと胸の中で鳴り進む精神を見る思いで...
横光利一 「旅愁」
...其時私の心の中へ、胸の中へ、頭の中へ、浮んで來るものは何であらう...
吉江喬松 「霧の旅」
...どっちへ?と、思いみだれ、胸の中で、泣き躁(さわ)いでいたが、誰ひとり顧みる者もない...
吉川英治 「宮本武蔵」
...今度は、若い頑丈な男だったが、この前と同様、ドシンとも、ビタビタともつかぬ、雑巾を踏みにじったような、異様な、胸の中のものを、掴(つか)み出す音と、一緒に、男の躰はずたずたに轢き千切(ちぎ)られて仕舞ったのだ...
蘭郁二郎 「鉄路」
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