...いま会って、一通りの話をした御雪太夫の面影(おもかげ)を思い返して、道中で見た時とは違い物々しい飾りを取りはずし、広くて赤い襟(えり)のかかった打掛(うちかけ)に、華美(はで)やかな襦袢(じゅばん)や、黒い胴ぬきや、紋縮緬(もんちりめん)かなにかの二つ折りの帯を巻いて前掛のような赤帯を締めて、濃い化粧のままで紅(べに)をさした唇、鉄漿(かね)をつけた歯並(はなみ)の間から洩るる京言葉の優しさ、年の頃はお松より二つも上か知らん、お松とは姉妹(きょうだい)のように思うていると言うたが、姉にすれば申し分のない姉、あんな姉があらばお松は仕合(しあわ)せである、お松のためにはこのままにして、あの太夫に任せておく方がけっく幸福か知らん...
中里介山 「大菩薩峠」
...赤い胴ぬきの着物を着るのを見るまで――...
長谷川時雨 「朝散太夫の末裔」
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