...しかし不幸にも大抵の作家はどれか一つを欠いた片輪である...
芥川龍之介 「侏儒の言葉」
...――昨夜(ゆうべ)、宵のしとしと雨が、初夜過ぎに一度どっと大降りになって、それが留(や)むと、陽気もぽっと、近頃での春らしかったが、夜半(よなか)に寂然(しん)と何の音もなくなると、うっすりと月が朧(おぼろ)に映すように、大路、小路、露地や、背戸や、竹垣、生垣、妻戸、折戸に、密(そっ)と、人目を忍んで寄添う風情に、都振(みやこぶり)なる雪女郎の姿が、寒くば絹綿を、と柳に囁(ささや)き、冷い梅の莟(つぼみ)はもとより、行倒れた片輪車、掃溜(はきだめ)の破筵(やれむしろ)までも、肌すく白い袖で抱いたのである...
泉鏡花 「薄紅梅」
...これ! 芳! 貴様はな少しばかりからかはれたと云つて腹を立つて他所様の子供衆を片輪にする位の根性骨があるなら何故首でも縊つて死んでしまはない...
伊藤野枝 「白痴の母」
...医術の限りを尽して片輪者を正常な人間に造り変えるのが目的だ...
江戸川乱歩 「孤島の鬼」
...片輪の蜘蛛がはいあるく・また逢うた支那の子供が話しかける西へ北へ支那の子供は私は去る歩いても眺めても知らない顔ばかり鉄鉢...
種田山頭火 「行乞記」
...・片輪同志で濡れてゆくぬれてはたらいてゐるは鮮人ぬれてひとりごというて狂人(キチガヒ)・それは私の顔だつた鏡つめたく日記焼き捨てる火であたゝまるあんまり早う焼き捨てる日記の灰となつた今宵も我慢しきれなくなつて...
種田山頭火 「行乞記」
...片輪者の集まりゆえ...
直木三十五 「南国太平記」
...「今晩は?」「あつしは早寢で、戌刻(いつゝ)半には床の中へ潜(もぐ)り込んだ位ですから、うと/\して居て、よくは知りませんが、お祭の笛だか、口笛だか、聞いたやうな氣がしますよ」「――」「目が覺めたから、序に手水(てうず)に起きて、雨戸をあけると、若い男の後ろ姿が、離室の前を驅けて行つたやうでしたが――」「若い男――?」「へエ、若い男でなきや、あんなに早く、跫音(あしおと)も立てずに飛べるわけはありません」「それは、確かに合圖の後だね」「へエ――」「合圖をして娘を呼出すのは、大根畑の專次一人だけだらうな」「いくら大家の我儘娘(わがまゝむすめ)でも、まだ十七そこ/\ですもの、二人も三人も男があるわけはありません」七平の舌には、何となく毒を含みますが、片輪なるが故に、人にも世にも捨てられてゐるせゐでせう...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...片輪になって帰らねばならないだろうか」ボーイ長は...
葉山嘉樹 「海に生くる人々」
...唯時々片輪になるに過ぎない...
松永延造 「職工と微笑」
...片輪になってから...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...片輪者のように思われたのでしょう...
夢野久作 「少女地獄」
...すぐに「片輪(かたわ)」という名前を附けて軽蔑したり...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...酒の酌には一興じゃ」「やい片輪...
吉川英治 「剣難女難」
...おぬしのような若者をしばしば片輪者にするのが嫌でのう...
吉川英治 「剣の四君子」
...片輪者になってはおらぬぞ」「なりたいのか」「息の音(ね)のとまるまでは仕合する...
吉川英治 「剣の四君子」
...片輪(かたわ)や死骸(しがい)になった味方(みかた)のなかに立ってぼんやりと朝の光を見ていた...
吉川英治 「神州天馬侠」
...背は四尺ぐらいしかない片輪者...
吉川英治 「親鸞」
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