...薔薇の匂(におい)、砂の湿り、――一切は翼のある天使たちが、「人の女子(おみなご)の美しきを見て、」妻を求めに降(くだ)って来た、古代の日の暮のように平和だった...
芥川龍之介 「神神の微笑」
...軒下の土の湿りを歩くのであるが...
石川啄木 「天鵞絨」
...気のせいかいやに湿りぽく腰の落つきが悪い...
伊藤左千夫 「浜菊」
...翌朝二時ごろに床の内湿りおるに目をさまし...
井上円了 「おばけの正体」
...前日までの長雨に大湿りの来た筵(むしろ)を何十枚となく乾し並べていたので...
海野十三 「三人の双生児」
...ふやけた土の湿りに根を下した木の性質は...
薄田泣菫 「独楽園」
...今朝は何だか湿りっ気がない...
近松秋江 「別れたる妻に送る手紙」
...薄湿りの大地の上に...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...これも生湿りの土の上に...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...……いま、有馬の湯できいたばかりなんだが、氷を盗んだとか盗まないとかいう浪人者は、じつは、おなじ割長屋にすんでいる男での……」……家には、ことし十歳になる伜が時疫で熱をだして寝たっきりになっていることから、青地が氷をもらいそこねて逆上し、つまらないことを口走ったてんまつを話してきかせると、部屋じゅうは、急に湿りかえり、なかには鼻汁(はな)をすするやつまでいる...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...睾丸(きんたま)が凍(こご)えるわ」師走(しわす)からこのかた湿りがなく...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...家内も湿り切ッて誰とて口を聞く者も無し...
二葉亭四迷 「浮雲」
...それが湿りを多少危険過ぎるくらいに心地よいものにしたのだ...
エドガア・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 「群集の人」
...流れの湿りが早めに草の根を目覚めさせてゐると思はれたので...
水野葉舟 「かたくり」
...さ霧のような湿りが来た...
宮本百合子 「結婚問題に就て考慮する迄」
...「湿りけのある今日の空気が香の試験に適していると思いますから」と言いやられたのである...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...落葉ふみしき山の上に漏るるともし火を見過して水のひびきに縫(ぬ)ひ込まれゆくわが自働車の肌も夜つゆに湿りたり...
室生犀星 「忘春詩集」
...静謐な湿りの重なりあう隙間にまで...
横光利一 「旅愁」
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