...貞世は姉のほうに向いて膝の上にしなだれかかりながら...
有島武郎 「或る女」
...弾丸が向いの窓を通ったと思わせるために...
海野十三 「省線電車の射撃手」
...「かず子!」お母さまはきびしく言い、そうしてかつて私に見せた事の無かったほど、威厳に満ちたお顔つきで、すっとお立ちになり、私と向い合って、そうして私よりも少しお背が高いくらいに見えた...
太宰治 「斜陽」
...河野は机の上に俯向いたままじっとしていた...
田中貢太郎 「神仙河野久」
...成は路ばたに坐って周に向い...
蒲松齢 田中貢太郎訳 「成仙」
...七兵衛は表向いて神尾主膳に紹介されました...
中里介山 「大菩薩峠」
...気の向いた方をお張りなせえ」「よし...
中里介山 「大菩薩峠」
...よほど上ったでしょう」と背中(せなか)を向いて見せる...
夏目漱石 「琴のそら音」
...然るに造化は更らに鋭利なる武器を以て、短刀直入し来りたり、そは他にあらず、寒気と強風これなり、寒気は日々厳烈を加え、風力また強大になり、岩角に触れて怒号する音轟々(ごうごう)として、一月中僅かに二、三日を除くの外(ほか)昼夜止むことなし、従(したがっ)て飲料に充(あ)つべき氷雪の収拾等の外出容易ならず、加うるに門口(かどぐち)の戸氷結して、容易(たやす)く開くこと能わず、折節十月三十日頃なりしかと覚ゆ、彼(か)の有名なる報効義会員二人にて、剛力を伴(ともな)い、郡司氏(ぐんじし)の厚意を齎(もた)らし来訪せられし時の如き、前日は風力猛烈なりしため、八合目より一旦(いったん)七合に引返したりといえり、二人は山頂の光景を見て、如何(いか)に感じけん、予に向いて、焉(いずく)んぞこれ千島(ちしま)の比(たぐ)いならんや、君(きみ)は如何にして越年を遂げんとするか、前途憂慮に堪えずと曰(い)われたり、十月末の光景を見て、既にこの言あり、進んで十二月に入りては、実に平地に在(あ)りて想像の及ばざるものあり、かくの如き有様なるを以て、重要の外は外出を為(な)さずこれかえって健康を害するの恐れあればなり、(外出の難(かた)かるべきは予期せる所なりしを以て、運動に供せんため自ら室内操櫓器(そうろき)と名(なづ)くる者を携え行きたりしが室内狭くしてしばしばこれを用ゆること能わざりし)故に僅かに狭少なる(まど)によりて下界を瞰下(みおろ)し、常に山頂の風力の強暴なるに似ず、日光の朗(ほが)らかなるを見て、時として妻(さい)などはもし空気が目に見ゆるものならば、この烈(はげ)しき風を世人(せじん)に見せたし、下界の人は山頂も均しく長閑(のどか)ならんと思うなるべし、彼(か)の三保の松原に羽衣(はごろも)を落して飛行(ひぎょう)の術を失いし天人(てんにん)は、空行く雁(かり)を見て天上を羨(うらや)みしに引(ひき)かえ、我に飛行の術あらば、暫(しば)しなりとも下界に下(お)りて暖かそうな日の光に浴したしなど戯(たわ)むれをいいしことありたり、実に山頂は風常に強くして、殆(ほと)んど寧日(ねいじつ)なかりしなり、然(しか)れども諸般(しょはん)の事(こと)やや整理して、幾分安堵(あんど)の思(おも)いをなし、室内に閑居(かんきょ)するに至(いた)るや、予が意気豪ならざる故といわんか、将(は)た人情の免れざる所ならんか、今までは暇(いとま)なくて絶えて心に浮ばざりし事も、夜半観測の間合(まあい)などには暖炉に向いながら、旧里(ふるさと)に預(あず)け置きたる三歳の小児(しょうに)が事など始めて想い起せし事もありたり...
野中到 「寒中滞岳記」
...八五郎はそつぽを向いて聽いてをりましたが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...ニュウグランドの向い...
久生十蘭 「だいこん」
...ようやくコワリョーフの方を向いて訊ねた...
ニコライ・ゴーゴリ 平井肇訳 「鼻」
...小母さまとTさんが向いあいに席をとり...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...老人が私の卓子(テーブル)へ来て差向いの椅子に掛けた...
山本周五郎 「青べか物語」
...ソファに同じ方向を向いて坐っていたときだったので...
横光利一 「旅愁」
...肩を高くして振向いた...
吉川英治 「三国志」
...後ろを向いているから――」と一列に揃って...
吉川英治 「宮本武蔵」
...――ふと、振向いて、(どうなされたのです?)と問うように、光悦は、下男のうしろに顫(おのの)いている母のすがたと、そこに立っている武蔵のすがたとを静かな眼(まな)ざしで見くらべた...
吉川英治 「宮本武蔵」
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