...そこに私はゆくりなく慎ましい美を発見するのでございます...
上村松園 「幼き頃の想い出」
...何故?妾はゆくりなくも...
海野十三 「ヒルミ夫人の冷蔵鞄」
...お客様はゆくりなく...
太宰治 「女生徒」
...その晩は又ゆくりなくも十畳の座敷に妙子と二人...
谷崎潤一郎 「細雪」
...その時ゆくりなくそんな気を起したと云うのではなくて...
谷崎潤一郎 「少将滋幹の母」
...自然……これも村人の心底から露骨にあらはれた自然の発展だからではあるまいか」此時ゆくりなく自分の眼前に...
田山花袋 「重右衛門の最後」
...ゆくりなく時雄が訪問すると...
田山花袋 「蒲団」
...もとの右大臣の御靈がゆくりなく京のひとりの少女子に憑いて...
田山花袋 「道綱の母」
...「はッ、御不審御尤(ごもっと)もでいらせられまする、実はその、当家の主人がかえって参りましたと申しましても、生きて戻ったわけではござりませぬ」「ナニ、生きて戻ったのでなければ、死んで戻ったのか」「はい」「それはまた、死人がどうして、これへ戻ったのじゃ」「ええ、もう無いものとあきらめておりました死体を、ゆくりなく、このほど、水の底から見つけ出しまして、今日、引取って参ることになりました」「何と言いやる、今まで水の底にかくれていた当家の主人の亡骸(なきがら)が、このたび、見つかった故(ゆえ)に、それを引取って参ったとな」「はい、左様の次第でござりまする」「生きているのでないならば、もはやこの家の主人ではあるまい」「左様の儀でござりますが、なにぶんにも、親類縁者が数多くござりまする故」「親類縁者が多数にあっても、この家のあとを継ぐべき者は無いというのではないか」「御意の通りにござりまするが、なにぶんにも、死体とはいえ、当家の主人が見つかりました上は、親類縁者一同寄り集まり、相当のとむらいの営みをしてやらねばならぬと、そのように申しておりまする」「いかさま、それはありそうな儀じゃ」「就きまして、恐れ入った次第でござりまするが、葬儀万端を営みたいと申しまするために、当分当家を拝借したいが、この儀いかがのものにやと、親類縁者共の願いでござりまするが……」「この屋敷で、葬式を営みたいと申すのか」「恐れながら、左様な不浄の次第ゆえに、公家様(くげさま)にはこのところを御動座あそばされるようにお願いでござりまする、二の丸に新たに御座所の用意を仕り置きました故に、明日にもあれへ、御動座のほどお願い致したい儀でござりまする」次の間で、用人がこれだけのことを、平身低頭して申し入れたのを、問答体(てい)に聞いて、これまで来ると、貴公子が暫く沈黙してしまいました...
中里介山 「大菩薩峠」
...そうして、ゆくりなく、この渡頭に立って見ると、たずねるところのマドロスが、遠眼鏡の視野の中に完全に落ち来ったものですから、いずれにしても、この向う岸を距(へだた)ること程遠からぬ地点に潜在しているのだ...
中里介山 「大菩薩峠」
...それが、ゆくりなく、中房の湯で、またぶッつかってしまった...
中里介山 「大菩薩峠」
...ゆくりなく、尾張の名古屋城の天主閣へ登った時、海が見えないとは言わないが、海を見るより鈴鹿峠の山を遠く眺めて、歯ぎしりをしました...
中里介山 「大菩薩峠」
...ゆくりなく島原の角屋(すみや)の御簾の間の昔に返って...
中里介山 「大菩薩峠」
...ゆくりなく御腰掛の端居(はしい)で出逢(であ)い...
久生十蘭 「鈴木主水」
...ゆくりなくもこのほど音信に接することができた...
正岡容 「随筆 寄席風俗」
...ゆくりなくも巡り会った...
吉川英治 「剣難女難」
...「まあ」ゆくりなく...
吉川英治 「親鸞」
...後に思うと――法然上人の第一声と、幼い親鸞(しんらん)の第一声とは、ゆくりなくも、生るべき時代に――約束のない約束のもとに――秋(とき)を同じゅうして世に出たともいえる...
吉川英治 「親鸞」
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